<<呼吸用保護具(マスク)>>
使用区分
作業環境には、粉じん、ヒューム、ミスト、有毒ガスなどの有害物質が発生する場合がありますし、
酸素欠乏(酸素濃度が18%未満となる状態)となる場合もあります。
このような時は、適切な呼吸用保護具を着用する事が必要です。
呼吸用保護具には、色々な種類があり、その体系は図のようになります。
※注意※
呼吸用保護具は、完成品の状態で有害物質に対して有効となるように設計されていますので、
使用者の判断による改造は絶対に行ってはなりません。
作業環境と使用できる呼吸用保護具の種類
作業環境の有害の程度による呼吸用保護具の選択については、表を参考にして下さい。
作業環境の有害の程度と有効な呼吸用保護具
(この表は「JIS T 8150」の付表1を基本にして作成したものです)
環境空気中の酸素濃度及び有毒物質 | 呼吸用保護具の種類(1) | ||||||||||||||||
給気式 |
ろ過式 |
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送気マスク | 自給式呼吸器 | 動力なし | 動力付き | ||||||||||||||
ホースマスク |
エアラインマスク |
空気呼吸器 |
循環式酸素呼吸器 | 防じんマスク | 防毒マスク | 粒子状物質専用 | 有毒ガス専用 | 粒子状物質・有毒ガス兼用 | |||||||||
肺力吸引形 | 手動送風機形 | 電動送風機形 | プレッシャデマンド形 | デマンド形 | 一定流量形 | プレッシャデマンド形 | デマンド形 | フィルタなし | フィルタ付 | ||||||||
酸素濃度不明又は18%未満(2) | 有毒物質の濃度が不明又は有毒物質の短時間曝露で生命・健康に危険がある場合 | × | △ | (3)△ | (4)○ | (4)△ | (3) (4)○ | ○ | △ | ○ | × | × | × | × | × | × | |
有毒物質の短時間曝露で生命・健康に危険がない場合 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × | × | ||
酸素濃度18%以上(2) | ガス・蒸気による汚染 | 短時間曝露で生命・健康に危険がある場合 | × | ○ | (3)○ | ○ | △ | (3) (4)○ | ○ | △ | ○ | × | × | × | × | × | × |
短時間曝露で生命・健康に危険がない場合 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ||
粒子状物質による汚染 | 短時間曝露で生命・健康に危険がある場合 | × | ○ | (3)○ | ○ | △ | (3) (4)○ | ○ | △ | ○ | × | × | × | (3)○ | × | (3)○ | |
短時間曝露で生命・健康に危険がない場合 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | × | ○ | ||
ガス・蒸気及び粒子状物質による汚染 | 短時間曝露で生命・健康に危険がある場合 | × | ○ | (3)○ | ○ | △ | (3) (4)○ | ○ | △ | ○ | × | × | × | × | × | × | |
短時間曝露で生命・健康に危険がない場合 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | ○ |
○:使用可 ×:使用不可 △:使用可だが、フィットネスが良好である事を確認すること
注(1) 電気を用いる呼吸用保護具を使用する場合は、防爆構造のものを、爆発の恐れのある環境では使用できません。
(2) 表における酸素濃度は大気圧下の状態を示します。気圧の低い場所では、換算して使用しなければなりません。
(3) フェイスシールド形及びフード形は、使用することが出来ません。
(4) 自動的に吸気源を他のものに切り替えられるように緊急時吸気警報装置を設置しなければなりません。
●酸素濃度が18%未満の環境及び その恐れのある環境 |
この場合は、給気式を選択する必要があります。 給気式には、送気マスクと自給式呼吸器がありますが、いずれの種類でも使用できます。 ただし、その環境に存在する有毒物質の濃度が高く、短時間曝露で生命・健康に危険がある場合には、対応できる種類が限られてますので、注意が必要です。 |
●酸素濃度が18%以上の環境 |
その環境に存在する有害物質の濃度が低く、短時間曝露で生命・健康に危険がない場合で、粒子状物質のみが存在する場合は防じんマスクを、ガス状の有害物質のみが存在する場合は防毒マスクを、粒子状物質及びガス状物質が混在する場合はフィルタ付防毒マスクを使用することが出来ます。 有毒物質の短時間曝露で生命・健康に危険がある場合は、表を参考にして選択する必要があります。 |
◆メモ◆ |
ろ過式は、環境空気中の有害物質を除去する事は出来ても、酸素を供給する機能はありませんので、 酸素欠乏環境で使用することはできません。 給気式は、作業環境とは異なる環境の空気または酸素などの呼吸可能なガスを供給する方式ですので、 たとえ、作業環境中の酸素濃度が不足していても有効です。 従って、酸素欠乏環境では、必ず給気式を使用しなければなりません。 なお、有毒物質の濃度が高く、短時間曝露で生命・健康に危険がある場合には、より防護性能の高い 呼吸用保護具を使用すべきです。 |
<防じんマスク>
防じんマスクは、作業環境中の粒子状物質を、ろ過材によって捕集し、 |
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●防じんマスクの種類
防じんマスクには、表1に示す種類があり、更に面体の種類によって、表2のように分類されます。
表1> 防じんマスクの種類
取替え式防じんマスク |
隔 離 式 |
直 結 式 |
|
使い捨て式防じんマスク |
表2> 面体の種類
全面形 | 顔面全体を覆うもの |
半面形 | 鼻及び口辺又はあごまでを覆うもの |
@取替え式 防じんマスク
マスクを使用中、部品が傷んだり、機能を減じたときには、その部品を交換するか又は、手入れによって機能を
回復させ、再使用のできるマスクをいいます。
取替え式防じんマスクの中で、多く使用されているのは、直結式の半面形ですが、眼の防護もしたい場合や、特に
高い防護性能を期待したい場合には、顔面とのフィットネスのよい全面形を選ぶと良いでしょう。
取替え式防じんマスクは、着用者自身がその顔面と面体とのフィットネスの良否を随時容易に検査できるもので
ある事が規定されています。
A使い捨て式 防じんマスク
マスクを使用中、次のような状態になったら、マスク全体を廃棄し、新品と交換する事を前提としているマスクです。
@)機能を減じた時
A)粉じんが堆積して息苦しくなったり、汚れがひどくなった時(清浄化による再使用をしてはなりません)
B)変形した場合(顔面との密着性に不具合を感じたとき)
C)表示してある使用限度時間を超えた時(最長16時間)
■防じんマスクの主要性能(粉じん捕集機能)
防じんマスクの
ろ過材が、粒子状物質(以下、粉じんなどといいます)を捕集する機能は色々ですが、
代表的な
ろ過材の種類とその機能は、下記のとおりです。
@静電ろ過材(静電気による捕集)
機械的、電気的方法で静電気を帯電させた羊毛又は合成繊維の不識布で、現在最も多く使用されている
ろ過材です。
単位面積当りの通気抵抗が低いため、比較的小さな面積で作られているのが特長ですが、溶接ヒュームや
オイルミストなどを捕集すると粉じん捕集が効率が低下する事があります。
岩石粉じんには問題は少ないと言われています。
Aメカニカルフィルタ(衝突などの機械的作用による捕集)
緻密な
ろ紙のようなフィルタから作られている
ろ過材で、捕集原理が単純な機械的作用なので、どのような
粉じんなどを捕集しても捕集効率の低下がほとんどありません。
非常に性能が高いものも作れますが、単位面積当たりの通気抵抗が高いので、折り畳んで通気面を大きくし
通気抵抗を下げています。
撥水又は撥油加工をしたものもあり、霧粒やミストの浮遊する現場で使用しても、吸気抵抗がほとんど増加
しない特長があります。
▼ 一口メモ + α ▼
◆ 防じんマスク ◆ | |||
通気抵抗の増加は、そのほとんどが粉じんなどの堆積により、通気流路が狭くなることにより起こります。 同じ素材のフィルタでは、面積が大きいほど通気流路が狭くなるスピードが遅くなり、結果として通気抵抗の上昇は少なくなります。 |
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◆ 使用上の注意 ◆ | |||
防じんマスクを使用する際は、次の事項に留意! | |||
1 | 酸素濃度が18%未満のところでは使用禁止。 酸素濃度が不明の場所では、給気式呼吸用保護具を使用。 |
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2 | 防じんマスクは、有毒ガスに対しては効果がないので、有毒ガスの存在するところでは使用禁止。 | ||
3 | マスクを装着したら、フィットテストを行って、顔面との気密が良好であることを確認してから、作業環境に入ること。 取替え式防じんマスク:吸気口を閉鎖して吸気する方法が、最も簡便で確実。マスク内蔵または附属の密塞具を利用すると便利。 使い捨て式防じんマスク:サッカリンミストなどの道具を用いてのテストが望ましい。 |
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4 | タオルなどを当てた上から防じんマスクを装着したり、メリヤスカバーを接顔部につけると、面体と顔面との気密を損なうのでしない。但し、皮膚に障害が生じる場合は、メリヤスカバーの使用可。面体が顔面に良く合い、薄手のものを選択。 | ||
◆ 保守管理 ◆ | |||
※メーカーの取扱説明書中の使用上の注意事項などを参考に。 | |||
1 | 要・定期点検。 | ||
2 | 防じんマスクが次に示すいずれかに該当する時、廃棄、修理または部品の交換を行う必要あり。 | ||
2-1 | ろ過材:破損、穴が開いた、著しく変形した場合。 | ||
2-2 | 面体、吸気弁、排気弁など : 破損、亀裂、著しく変形した場合。粘着性が認められた場合。 | ||
2-3 | しめひも:破損、弾性を失い、伸縮不良の状態になった場合。 | ||
2-4 | 使い捨て式:使用限度時間に達した、使用限度時間内でも作業に支障をきたすような場合。著しく変形した場合。 | ||
3 | 防じんマスクを使用中、面体内及びろ過材の裏などに汚れが認められた場合。 | ||
4 | 防じんマスクのろ過材に粉じん等が堆積した場合。 |